必要不可欠なエクイップメント:デーン・レイノルズのThe Sperm Whale。「このボードにはちょっと理解できないところがある。どこか神秘的だと言ってもいい。逆説的ではあるが、乗るのが簡単なのにもかかわらず、マスターするのが難しい。そんな感じのサーフボードはどうやって生まれたのか? デーンとシェイパーに訊いてみよう」
「トーマス(・キャンベル)が本を作っていて、モロッコで乗る予定のサーフボードを僕自身がシェイプしている写真を撮りたいと言ってきたんだ。彼はその写真が本のウリになると思ったみたい。彼はアレックス(・ノスト)に対してもそれと同じことをしたらしいね。その後、僕は膝を怪我して結局モロッコには行かなかったんだけど、それでも自由な感じで3本のサーフボードをシェイプしたんだ。僕は自由にやるのが合っているって感じたよ。僕のポイントはこうだ。ボードの上に立って自分の足下を見る。それが奇妙なシェイプで、つま先側と同じようにかかと側にも力を加えられないようなら、調和がとれていないってことでしょ」
デーンは自分の原則について語りながら、なおも続ける。「で、僕たちは午後の間ずっとシェイプルームにこもっていたんだ。トーマスがもっと変わった写真を撮りたいって思っていて、フォームをクリスマスツリーにも見えるようにカットしていった。そうやって出来上がったのがThe Sperm Whaleさ。薄くなりすぎる手前のギリギリのところまで削っていって、それからラミネートにまわした。トーマスはどうしたらいいか僕に教えてくれていて、もっとVeeをつけたほうがいい、もっとだよ、もっとってずっと言っていたよ。最後はめちゃくちゃ薄くなって、ボード全体がVeeみたいな感じになった。僕は彼がこれまでボードをシェイプしたことがないって知らなかったんだ。彼はさも自分がスキップ・フライかなにかのように言い続けていたね。結果は不格好なThe Sperm Whaleのようなものだったけど、名前をつけて、なんとか乗れたよ。というか、僕は『いいじゃん』って思ったけど、トーマスは納得しなかった。彼は僕が乗ったときの感じが好きじゃなかったみたい。僕はそれをチリに持っていったんだけど、彼はずっと乗るのをやめるように言い続けていた。でも、かなりおもしろいボードだったよ。僕にとってはね」
チャネルアイランズのトラビス・リーは言う。「デーンはそのときヒザの怪我をしていたから、しばらくそのボードはほったらかしになっていたんだ。だけど、回復してきたらまたそれを引っ張り出してきて、かなり乗るようになった。とにかくすごく速くて、楽しそうに乗っていて、見ていたこっちが驚いたよ。見た目が悪かったとしても、マジックボードになり得ることはあるし、すごく調子がいいことがある。このボードを一つのモデルとして完成させるためにスキャンして、再現するとき、僕たちはデーンのオリジナルシェイプのいい部分を損なわないようにしたよ」
デーンは言う。「トラビスはThe Sperm Whaleのオーダーが入り続けているって言っていたし、だからそのボードをスキャンしたみたいだけど、僕としては多くの人が僕のThe Sperm Whaleに乗ったライディングを見ているのを知って驚いたし、たくさんの人がThe Sperm Whaleを好んで乗っているのを知ってびっくりしたんだ。今回のスキャンしたバージョンは、大きな欠陥をすべて取り除いたから、かなり調子いいよ。もっとクセが少なくなっているんだ。根本的な部分はそこまで変わった感じじゃないし、プレーニングエリアもたくさんあってフラットな形状だし、エッグのように幅広くてキックがあるテールだからピポットのようなターンもしやすいしね」
「このボードは熱狂的なファンがいて、オーストラリアと日本では特によく売れているよ」とトラビスは言う。
そしてデーンはこう付け加えた。「僕は実際のThe Sperm Whaleよりもっと多くの自作のThe Sperm Whaleみたいなボードが増えてくると思うよ。そうなったらかなりクールだね」
ディメンション:5’5”×21 1/4”×2 1/8”でボリュームは28.1L。興味深いのはチャネルアイランズのトラビスが言った余談だ。「デーンがこのボードをフォームの状態からシェイプするとき、メジャーなどの道具を使わなかったのに、デーンのノーマルボードとほとんど同じボリュームに仕上がったっていうのは信じられないよ」
記事:デレク・ライリー
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